
企業の経営を引き継ぐ時期が近づいている中、小規模から中堅企業の社長にとって事業承継における銀行の関わり方を理解しておくことはますます重要になっています。
経営権の移行だけでなく、資金調達や税金対応、株式譲渡など多岐にわたる課題を抱える中で、銀行がどのような役割を果たし、どう活用すれば承継がスムーズに進むのかを整理しておきましょう。
事業承継における銀行の基本的な役割とは
事業承継において銀行が果たす基本的な役割として、まず相談相手であるという点が挙げられます。長年の取引を通じて、企業の資金繰りや財務内容を把握している銀行は、後継者への株式移転や相続時の納税、資産の整理など、承継にまつわる実務的な部分においても信頼できる存在です。
また、金融庁の方針の中でも事業承継支援の積極化が求められており、銀行側も承継案件への対応力を強化しています。信頼関係があるからこそ、経営者にとっては最も相談しやすいパートナーの一つとなるのです。
銀行を活用した資金対策と支援の場面
事業承継において銀行を活用する主な場面のひとつが資金対策です。たとえば、自社株の譲渡や贈与にともなって発生する納税資金を確保する必要がある場合、銀行融資を利用して負担を軽減するケースがあります。
また、承継後の経営安定化や成長投資のために、事業計画に基づいた運転資金や設備資金を金融支援として受けることもあります。銀行は、単にお金を貸すだけでなく、承継に関わるファンドの紹介や専門家ネットワークとの連携を通じて、より実効性のある支援を行う存在になりつつあります。
事業承継において銀行と連携する際の注意点
一方で、事業承継において銀行と連携する際には注意点もあります。銀行はM&Aの仲介者や後継者の最終判断者ではないため、全てのプロセスを任せきりにするのではなく、必要に応じて士業やコンサルタントなどの専門家と連携を図る必要があります。
また、相談の際には自社の財務状況、経営の方向性、株主構成などを整理して提示できる状態にしておくことが、対話の精度を高めるうえで重要です。銀行にとっても支援すべき相手かどうかを見極める要素となるため、準備不足は避けたいポイントです。
事業承継における銀行の関わり方を正しく理解し、適切なタイミングで相談・活用することで、経営者にとっても後継者にとっても安心できる承継体制を整えることができます。中小企業の未来を支える選択として、銀行との連携はますます欠かせないものとなっています。